次へ→

中小企業における粉飾決算の見抜き方

業績悪化と決算対応


 収益力判断に有用な、利益調整等を行う前の会計データは、部外者には入手困難です。
 ですから、利益調整や粉飾等が行われた後の決算書から、実際の収益力等を判断するしかありません。
 その際に一番役に立つのが、決算時における社長の対応です。

 中小企業では法人税等の負担を回避するために、元々
  「利益がほとんど出ないように」
役員報酬額等を設定しています。
 ですから、業績が悪化してくると、すぐ赤字になります。
 つまり、利益調整等を行う前の生データでは、赤字決算となっています。

 多くの社長は、その結果を踏まえて、軽い利益調整によって黒字決算にするとともに、次年度は赤字決算にならないように自分の役員報酬額を減らす等の対応をします。
 それとともに、状況によっては交際費等の支出を抑えはじめます。
 ですから、業績悪化は
  「利益の減少」
として表われるのではなく、
  「役員報酬額等の減額」
となって表われます。
 ここでいう等とは、主として経営者一族に対する地代家賃や交際費をさしています。

 ちなみに役員報酬額は、決算日後3ヶ月以内に行われる定時株主総会の開催時以外のタイミングで変更すると、一般的には法人税法上で不利な取扱いを受けることになります。
 したがいまして、社長は決算を検討しながら、同じ時期に翌期の収益力を予測して、役員報酬額の変更を行うのが一般的です。

 ですから、決算書を入手したら、同時に
  「役員報酬額を変更する予定があるかどうか」
もヒアリングすると、収益力の判断に役立つ情報が得られます。




    中小企業の財務分析セミナー Web版    次のページへ