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中小企業における粉飾決算の見抜き方

業績悪化の兆候


 財務分析上の一般論として、売上高が減収傾向になれば、業績に陰りが見られるのではと考えられます。
 この見方は中小企業においても当てはまります。
 中小企業の財務分析においても、売上高の推移は一番注目すべきチェックポイントの一つだといえます。

 同様に、利益が減少すると業績が悪化しているという判断も、財務分析の世界では一般的な判断です。
 しかし、こちらの見方は、中小企業の場合には基本的に当てはまりません。
 中小企業の決算書における利益は、法人税等の節税目的で、役員報酬等によってコントロールされているからです。

 したがって、業績悪化の徴候を把握するためには、まず売上高の減少傾向に目を付けるところから始めるのがよいと思います。

 次にチェックすべきポイントを説明する前に、まずは決算書が作成される過程を理解する必要があります。
 収益力が落ちてきたならば、社長自身はその状況を肌感覚で感じ取っているはずですし、決算時には金額として集計されるので、その段階でよりリアルに把握できます。
 その何も手を加えられていない集計されたままの生データを確認した上で、多くの社長は利益調整の方法等を検討し、決算書を確定させます。

 実務的には、顧問会計事務所が決算書を作成することが多いでしょう。
 ただし数字、とくに最終の当期純利益については、利益調整の方法と合わせて社長自身が決定するケースがほとんどだと思います。
 そして、
  「こんな内容にしたい」
と社長が考えた決算書が、最終的な会社の決算書として確定します。

 時に多額の利益調整や粉飾処理が行われた決算書が出来上がります。
 このようにして作成される中小企業の決算書に対しては、一般的な財務分析手法の適用は困難です。




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