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中小企業の決算書を読みこなす

基本的な財務分析方法


 今まで見てきた中小企業の財務分析方法を、ここで復習してみましょう。
 儲かっている会社は、売上高が増加傾向にある場合が多いですが、利益は増加傾向にあるとは限りません。
 その代わりに、経営者一族に対する役員報酬や地代家賃が増加傾向を示すことが一般的です。
 同時に交際費も増加しやすい項目の一つです。

 逆に業績が悪化し始めると、軽く利益調整を行いながら役員報酬等を減額していき、赤字体質を回避する傾向にあります。
 それでも回避できないくらい損失額が大きくなると、粉飾処理を行うようになります。
 つまり、不良資産が貸借対照表に計上されるようになります。

 赤字と黒字で行ったり来たりしている状況であれば、粉飾を行ったり取り崩したりするため、不良資産は増えたり減ったりしています。
 赤字が継続するようになってしまうと、その赤字を粉飾で隠し続けるために、貸借対照表上に不良資産がひたすら蓄積され始めます。
 小さな粉飾であれば、仮に気が付かなくても、不足の損失を被るような状況にはなりませんが、大きな粉飾を見逃し対応が遅れると、予想外の大損失を被る可能性があります。
 大きな金額で粉飾された場合で、気が付きにくい主なケースは、在庫の過大計上と、架空売上の2つです。

 その場合には、もともと金額の大きい棚卸資産や売上債権が過大となるため、気が付きにくいのです。
 それ以外の項目で粉飾をすれば、貸借対照表上で目立ってしまうため、比較的簡単に粉飾を見抜くことが可能です。

 棚卸資産や売上債権を利用して粉飾が行われた場合には、在庫や売上債権の回転日数を長期的に並べてみれば、比較的簡単に見つけることができます。
 一番大切なポイントは、棚卸資産と売上債権の回転日数を、できるだけ長期間にわたって確認して、増加傾向を示していないか検証することで、不測の損害を未然に防ぐことだと思います。




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