次へ→

財務分析の具体例

損をしたり儲かったりする会社の決算


 粉飾をすると不良資産が増えます。
 ところが粉飾をした翌年度に、役員報酬の減額や実際の業績回復等によって、相当額の利益を計上できる状況になると、今度は不良資産を費用化して、利益を圧縮することになります。
 不良資産を温存したまま、わざわざ相当額の利益を計上しても、法人税等の負担が大きくなるだけでもったいないと、多くの社長は考えるからです。

 ですから、儲かったり損をしたりが繰り返される会社の場合には、損をした際に粉飾をして、儲かったときに粉飾を取り崩して、結果として毎期少額の利益を計上するケースが非常に目立ちます。
 粉飾の結果として発生する不良資産は、増えたり減ったりします。
 (税法上は、粉飾により発生した不良資産を取り崩しても、その分は取り崩した期の損金にはできないのですが、実務的には損金扱いしている事例をよく見かけます。)

 たとえば、500万円の損をした年度には500万円程度の粉飾をして僅かな黒字決算を組み、翌年に500万円だけ利益がでると、今度は前年度に粉飾した500万円を取り崩して費用化し、僅かの黒字決算を組む。
 結果として、粉飾で発生した不良資産は、500万円からゼロに戻ります。

 さらに翌年度500万円の損をすると、再度500万円程度の粉飾をして僅かな黒字決算を組み、その翌年度に500万円の利益が出ると、再度粉飾を全額取り崩して、同じく僅かな黒字決算を組む。
 結果として、粉飾によって発生する不良資産は、500万円に膨らんだ後にゼロに戻っています。

 会社の本来の業績としては、赤字500万円と黒字500万円が交互に訪れたとしても、毎期の決算書は常に僅かの黒字決算を作成する。
 その裏で不良資産を増やしたり減らしたりしている。
 これが、儲かったり損をしたりしている中小企業で、よく見られる決算書のパターンです。

 このような粉飾決算は、見つけることが非常に困難です。
 しかし、見つけることができなくても、大きな問題ではありません。
 なぜなら不良資産が大きく増えていかないということは、赤字の時があったとしても、その赤字に相当す
る黒字を計上した決算期もあるという証拠ですので、結局チャラになるからです。

  赤字500万円→黒字500万円→赤字500万円→黒字500万円
という業績を
  若干の黒字→若干の黒字→若干の黒字→若干の黒字
と勘違いしても、利益の平均値で見れば同じことです。
 この程度の勘違いでは、財務分析の結果を大きく間違えるようなことにはなりません。




    中小企業の財務分析セミナー Web版    次のページへ