次へ→

財務分析の具体例

架空売上について


 在庫の水増しと並んで注意を要するのが、架空売上です。
 架空売上を計上した分だけ、利益は過大に粉飾できます。
 多額の粉飾を比較的簡単に行えて、しかも見つかりにくい粉飾方法です。

 架空売上を計上すると、その計上額に見合った架空の売上債権が貸借対照表上に計上されます。
 ですから、架空売上を見つけるには、売上高の推移からみて、売上債権が異常に増加傾向を示していないかを、できるだけ長期間のデータを用いてチェックすることが大切です。

 売上債権については、手形で回収済みの受取手形と、未回収の売掛金がありますが、合算して分析すれば大丈夫です。
 時には別々に分析することが有効なこともありますが、基本的には合計した金額で売上債権全体として回転日数の長期的な推移分析をすればよいでしょう。
 その際には、手形のうちで既に割引いた割引手形分や、裏書きした裏書手形分も合算してください。

 売上債権は会社によって、決算期末日が土日に当たるかどうかで、1月分くらい残高が増減する可能性があります。
 ですから、長期のトレンドで判断することが、なおさら重要となります。

 また、一時的な取引で金額が伸すことがありますので、ときには売上債権と相関関係の強い買掛金や支払手形といった仕入債務の増減も同時にチェックして、架空売上の有無を推測することが望まれます。
 一時的な売上で売上債権が大きく増加する場合には、それに対応した仕入債務も一時的に大きく増加しているものと思われます。
 そのようになっているかを確認してみるのです。

 要は、合理的に説明のつかない売上債権回転日数の増加傾向を存在しているかを、データの長期的に並べたところで多面的に判断することが必要ということです。




    中小企業の財務分析セミナー Web版    次のページへ