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財務分析の具体例

内訳明細書のチェック方法


 架空売上の可能性が高いと思われる場合には、売上債権の内訳明細書を確認することが大切です。
  (借)売掛金 ××円 / (貸)売上高  ××円
と粉飾の仕訳をいれると、決算書は簡単に粉飾できて、その金額分だけ利益は増額できます。
 しかし、存在していない売掛金が貸借対照表に計上されてしまいます。
 そして実務的には、この存在しない売掛金まで含めたところで、売掛金の内訳明細書を作成する必要が生じます。

 ここで多くの中小企業では、この架空の売掛金が目立たないように、次の3つの方法によって内訳明細書を作成する傾向にあります。
  @一番金額の大きな得意先の金額に含めてしまう。
  Aその他として明細の一番下にまとめて記載してしまう。
  B幾つかの相手先に分散してしまう。

 @一番金額の大きな得意先の金額に含めてしまうという方法は、一見分かりにくいのですが、一番金額の大きな取引先は継続的な取引先のため、取引の月平均額と売上債権の回収期間をヒアリングすれば、自ずと過大な部分が浮き彫りになってきます。
 できれば、決算日後の実際の回収状況まで確認できれば、より明確に粉飾を特定できます。

 Aその他として明細の一番下にまとめて記載してしまう方法は、その他として記載される金額が、他とのバランスにおいて異常に多額となっていることがほとんどです。
 ですから他の相手先に対する金額と比較して、その他としてまとめられている金額が異常に多額である場合には、粉飾による不良資産が混在している可能性が高いと判断してよいでしょう。

 B幾つかの相手先に分散してしまうという方法は、粉飾の判断が一番難しい方法ですが、実際に利用されるケースは@、Aの方法ほど多くはありません。
 そういった意味では比較的心配する必要はないですが、それでもBの方法で明細を作られると、内訳明細書から不良資産を把握することは困難です。
 その場合には、やはり基本に戻って、売上債権の回転日数が長期にわたって増加していく傾向と、そのようなことが起こるような実態が存在しているかを、丁寧に見ていくことが大切になります。




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