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中小企業における粉飾決算の見抜き方

利益調整と粉飾決算


 決算書の粉飾は会社法違反です。
 許されるべき行為ではありません。
 上場企業の場合は、仮に粉飾をしようと思っても、公認会計士や監査法人の監査チェックによって事前に阻止されますし、阻止されなかったとしても最終的に粉飾決算が明らかになれば社会問題化して、粉飾決算に荷担した担当者等は処罰を受けることになります。
 会社の存続すら危ぶまれることがあります。

 しかし、中小企業の場合は少し事情が異なります。
 中小企業の場合は、仮に粉飾決算を行っても、実務上でペナルティーを受けることが現状ほとんどありません。
 また、悪い内容の決算を行うと、金融機関に警戒されて資金繰りに支障をきたす等、粉飾しないことが、かえって会社存続の危機に直結してしまう面があるのです。

 また、どこまでが会計ルール上で認められる利益調整で、どこからが違法性のある粉飾処理になるのか、その判断が困難といった問題もあります。
 そのようなことから、何とか黒字の決算を行おうと考えているうちに、気が付いたら粉飾をしてしまっている会社が多いのだと思います。

 いずれにしても、本書では粉飾の悪質性を咎めることが目的ではありません。
 仮に粉飾処理が行われていたとしても、それを浮き彫りにして適正な財務分析を行うことができれば、それで目的は達成できます。

 ですから本書では、適法な利益調整と、違法な粉飾処理とを明確に区別することなく、軽度の調整を利益調整、多額の調整を粉飾として、説明していきます。
 このようにして作成される中小企業の決算書に対しては、一般的な財務分析手法の適用は困難です。




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