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中小企業における収益力とは

節税効果の繰り延べ


 この状態が続くと、7年後に所得が1,000万円発生した際に、法人税はほとんどかからないまま、税務上の繰越欠損金が2,000万円残った状態で、繰越ができなくなります。
 8年後には、1,000万円の所得に対して、通常通りの法人税等が課税されます。
 つまり、8年前に計上した役員退職金1億円のウチ、2,000万円分だけ法人税等の節税効果が得られなかったということになるのです。

 であれば、8年前に役員退職金を無理せず8,000万円に止めておいた方が、所得税も少なくて得だったかもしれません。
 節税を意図して赤字を作る場合には、赤字の金額は、その後7年で見込まれる所得の範囲内に収まるようにするのが一般的です。

 逆読みすると、
  「作った赤字の金額までは7年以内に確実に利益計上できる」
と、社長が見込んでいる可能性が高いことが推測されます。

 役員退職金の金額が、法人税法上いくらまでなら過大といわれないか。
 その金額と比較して役員退職金をいくらに決めたか。
 そのあたりを確認すると、会社の将来的な収益力について、参考になる情報が得られると思います。

 ちなみに、税務上の繰越欠損金は、法人税申告書の表紙に金額が記載されています。
 法人税申告書の表紙を見ただけで簡単に把握できるのです。
 税務上の繰越欠損金は、別表7に詳細が記載されます。
 別表7をみれば、いつ発生した税務上の赤字が、あと何年繰り越せるか分かります。




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