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キャッシュフロー分析の基本

キャッシュフロー分析の留意事項


 キャッシュフロー分析は、粉飾の影響を受けにくいため、中小企業の決算書に対する財務分析では、大変威力を発揮する分析手法といえます。
 ただし、次の点に注意する必要があります。

 一つめは、決算書以上に長期のトレンドで判断する必要があるという点です。
 入出金のメインとなる売上債権の回収や仕入債務の支払は、たとえ回収や支払のサイトが同じでも、決算期末日が週末にあたるかによって、1月分の金額が増減してしまいます。
 それ以外にも、大きな入出金が期末日前後にあるかどうか等で、算出される入出金額が大きく変動してしまいます。
 ですから、2年分の決算書を用いて1年分のキャッシュフローを分析しても、実はほとんど意味をなしません。
 最低でも3年分の決算書を用いて、2期分のキャッシュフロー分析をする必要があると思います。
 できれば、4年分以上の決算書を用いて、3期分以上のキャッシュフローを分析することが望まれます。

 二つめは、経常的かどうかの判断です。
 決算書の財務分析において、当期純利益は当然に重要ですが、非経常的な損益項目を差引きする前  段階の経常利益も、会社の収益力を判断する際には、大変重視されます。
 同様にキャッシュフロー分析においても、経常的な収支を見ることは重要です。
 ですから、特に特別損益項目を中心として、非経常的に発生する項目は除外して、経常的なキャッシュフローを把握することも怠らないようにしてください。

 ただし、非経常的の判断にもいろいろあります。
  @毎期確実に発生しそう
  Aたまには発生しそう
  Bそうそう発生しなさそう
に合わせて、@だけで検討すれば、毎期確実なキャッシュフロー、Aまで含めて検討すれば、たまにはあり得るキャッシュフロー、Bまで合わせれば、結果としてのキャッシュフローが把握できることになります。
 キャッシュフローを把握する目的に合わせて、使い分けが必要です。
 同様に、不可避的に発生した収支か、何等かの決断によってその期に発生させた収支なのかといった区分も、時に大切なときもあります。



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