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中小企業における収益力とは

注意すべき3つの留意点


 役員報酬によって中小企業の業績を判断する方法は、非常に簡単かつ有効な分析方法です。
 しかし、その適用には注意すべきポイントが大きく3つあります。
 次の3つの内、どれかに当てはまっている場合には、この分析方法がうまく適用できませんので、当てはまっていないか十分に検討をしてください。

 一つめの留意点は、社長が係数に弱くて、節税に対する意識が極めて低い、さらに、顧問会計事務所による指導も十分に行われていない場合です。
 このような場合には、会社の収益力に合わせて役員報酬の調整がなされないため、この判断方法が適用できません。
 他の方法も含めたところで、収益性の判断をする必要があります。
 このようなタイプの会社は、全体の1〜2割程度あるように思います。
 もっとも、収益力が変化してから役員報酬額が調整までには、ある程度のタイムラグがあるのが普通です。

 2つめの留意点は、社長が経済合理性をあまり考えない場合です。
 このような場合には、会社の業績がどうであろうと、納税において損をしようと、たとえば
  「社長の役員報酬は2,000万円」
と決めて、変えようとしないため、この判断方法が適用できません。
 特に、比較的大きな金額が飛び交う不動産業、土木建築業等の業界では、ちょこちょこ見かけます。
 このパターンの場合も、他の方法を含めたところで、収益性の判断をする必要があります。

 3つめの留意点は、一定以上に業績が悪くなった場合です。
 役員報酬額は、ある一定額以上まで下げると、所得税の節税効果が無くなります。
 したがって、ある程度まで役員報酬額を下げてしまっている会社の場合には、業績が悪化しても、それに合わせて役員報酬額を下げなくなります。
 収益力が減少していく過程は、役員報酬額の減少傾向を把握することで、ある程度は把握可能です。
 しかし赤字体質になった、あるいは赤字幅が拡大していくような場合には、この方法が適用できません。
 この方法に変わって、粉飾決算の項目等で説明する分析方法が、たいへん威力を発揮します。




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