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中小企業の決算書を読みこなす

中小企業の収益力を見抜く


 会社と個人が実質的に一体となっている中小企業の場合、経営者一族が経済的にどれだけ余力をもっているかを把握することが、財務分析の一番の目的になると思います。
 そうであれば、中小企業の収益力は、利益計上による会社価値のアップを含めて、経営者一族が会社から経済的便益をどれだけ受けられるかで判断することが大切です。
  収益力 =  会社の計上利益
         + 経営者一族が受ける役員報酬等の経済的便益
ということです。

 経営者自身が借入をしており、その返済に会社からの地代家賃や役員報酬等を当てているために、それらを減らすことができないような場合には、その相当額分だけ経営者一族が受取る役員報酬等の経済的便益を減額して考える必要があります。
 収益力 =  会社の計上利益
        + 経営者一族が受ける役員報酬等の経済的便益
        − うち借入返済等のために実質的に減額できない経済的便益

 粉飾されている決算書の場合には、計上利益を粉飾額だけ修正することが必要です。
 収益力 =  会社の計上利益 
        + 経営者一族が受ける役員報酬等の経済的便益
        − 1年あたりの粉飾額
となります。

 一年あたりの粉飾額とは、増加傾向にある売上債権や在庫等について、その異常に増加している金額を、異常に増加しはじめてからの年数で割れば、推測できます。
 たとえば、売上高は一定であり、その他に特別な理由がないにもかかわらず、在庫が5年間で5,000万円ほど異常に増加しているのであれば、1年あたりの粉飾額は、
 1,000万円 (=5,000万円÷5年)
と推測できます。
 その場合、会社の利益は計上されている当期利益より、各年度とも平均して1,000万円ほどマイナスであったと考えることが妥当と思われます。

 収益力がマイナスになる年度もあることでしょう。
 実質的には赤字決算であったということです。

 儲かっている会社における決算書の見方は、経営者一族が何人でどれだけの経済的利益を享受しながら、なお会社でいくらの利益が計上できているという見方が正しい見方だと思います。
 一方、赤字体質を粉飾でごまかしている会社の場合は、経営者一族が何人でどれだけの経済的利益を享受することで、結果として会社は実質的にいくらの赤字となっているという見方になるのでしょう。




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