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財務分析の具体例

赤字体質会社の決算書


 損をし続けている会社には注意が必要です。
 粉飾にだまされて、このような状況に気が付かないようなことがあってはなりません。
 このような場合に、だまされないようにする簡単な方法があります。
 できるだけ長期間のデータを並べて考える。
 大切なポイントは、たったこれだけです。

 損をし続けて、その損を粉飾によって隠し続けると、不良資産が貸借対照表にドンドン貯まっていきます。
 儲かったり損をしたりが繰り返されている間は、不良資産は増えていきません。
 赤字体質が確立してしまってからは、不良資産は継続的に増加傾向を示します。
 データを長期間並べてみれば、そのようなトレンドを把握することは簡単です。
 とくに大きな赤字を大きな粉飾で継続的に隠しているような場合には、本当に簡単に見つけることができます。

 たとえば、売上が100百万円で、在庫が19百万円の会社があったとしましょう。
 売上高が大きく変動しないのであれば、在庫も毎期19百万円程度で推移するのが一般的です。
  19→22→18→21→20→19
 こんな感じです。

 これが継続的に赤字体質の会社で、その事実を在庫の水増しで粉飾しているような場合には、次のような推移を示します。
 毎期3百万円だけ過大計上を繰り返しました。
  19→25→24→30→32→34
 明らかに怪しい感じになります。
 5年間で15百万円も増えていますから、目立ってしまいます。
 だから簡単に把握できるのです。

 大切なポイントは、できるだけ長期間のデータを並べて考えることです。
 先程の事例でも、売上が変わっていないのに在庫は
  19→25→24→30→32→34
となっているから、明らかに怪しい感じになるのですが、最近3年分だけの数値で判断しようとすると
  30→32→34
となり、怪しいのかどうか、非常に分かりにくくなります。

 長期間のデータを並べれば極めて簡単に把握できることが、3年分のデータに限定してしまうと、本当に把握が困難になってしまうのです。
 ですから、できるだけ長期間のデータを利用して分析するようにしてください。




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